村崎ユカリ先生の『マダムと理想のアンドロイド』(KADOKAWA)。5/22に発売されたばかりです。カテゴリはコミックエッセイとなっております。
もう面白くて面白くて、しかもこちらがオタク入ってると「分かる~」と共感しまくりで楽しさも倍増。自分ならどうするかな、と想像が広がって読んだ後も楽しい時間を過ごせます。
あらすじ
時は2083年。一人一体アンドロイドを所有しているのが一般的な時代に、高齢の景子はアンドロイドを持たず一人暮らしをしていた。ある日、友人である真紀から「アンドロイドは便利よ」とオススメされ、アンドロイドの製作会社である「ドリーム・パートナーズ」の高橋に製作を依頼することに。高橋の手に渡された企画書には、なんと「魔界の第二王子」のイラストがあり———!?
コミック裏表紙より
もう設定が優勝。しかも景子さんの脳内が素晴らしすぎて優勝。
登場人物が全員愛すべきキャラってあります?? 次はどんな人が、どんなアンドロイドが出てくるのか楽しみでページをめくる手が早くなります。
この作品は村崎ユカリ先生のXで連載されていて今も見ることができますので、この記事ではいつもより詳しく内容を書かせていただきます。コミックには描き下ろしが2本入っていますよ!
第1話~第2話
景子とアンドロイドの話。
高齢一人暮らしの景子が友人の真紀に勧められて、アンドロイドを申し込みに行く。景子が描いてきたアンドロイドの見た目や設定はなかなかこだわりのある物だった。一緒にお店(ドリーム・パートナーズ)についてきた真紀が戸惑う中、販売員の高橋は困惑するどころか設定について細かく質問してきた上に、景子の好みを掘り下げて理解し注文を受け付ける。
三か月後、アンドロイドを受取りに景子と娘と孫、真紀が店を訪れると景子の理想通りのアンドロイドのギルディア=ロッド=シン=ダークスターが登場する。半ば引き気味の真紀に対して、景子と娘と孫は大喜び。血は争えないと真紀は思うのだった。
〝一風変わった〟アンドロイド(愛称はギル)を手に入れた景子が心配で、真紀は様子を見に彼女の家を訪れる。設定に忠実なギルのハチャメチャな行動に困惑するが、景子は意に介してない様子。今後も様子を見に来ようと思う真紀だった。
第3話
景子の娘一家の話。
景子のカスタムアンドロイドを見て自分のアンドロイドが欲しくなった孫のゆみり。父にねだるとどういうのが欲しいのか描いてみるように言われたので、事細かな設定とイラストを見せる。その設定に戸惑った父が反対すると、ゆみりは困って母の恵美と一緒に祖母である景子に連絡をする。景子は自分のアンドロイドを担当してくれた販売員の高橋に相談するように手配してくれる。
高橋は景子の時と同様に的確なアドバイスや提案をし、父もそれなら、と納得してアンドロイドを注文した。
数か月後、出来上がってきたアンドロイドの皇燈火&水輝(すめらぎとうか&みずき)は中々設定どおりに癖があって、ゆみりと恵美は大喜びするが父はどうもしっくりこないのだった。
第4話
景子の家に真紀がアンドロイド(ジェームス)と共にやってきて、二人でアンドロイドの写真を撮ってキャッキャする話。
第5話~第6話
夏美とアンドロイドの話
ドリーム・パートナーズに高齢の上品な和服女性がアンドロイドの注文をしに訪れる。新入社員の渡部は先輩の高橋の接客を学ぼうと同席する。和服女性・夏美が差し出した資料は設定が具体的な上に外見も個性的だった。渡部が理解が追い付かず戸惑っている横で、高橋は設定を細かく確認し夏美の一風変わったこだわりにも同調して納得し、彼女の注文を受け付ける。数か月後、出来上がってきたアンドロイド(稲荷森 八雲)は夏美の理想通りで、ドリーム・パートナーズに頼んで良かったと彼女はしみじみと感謝するのだった。
一方、夏美の代わりに買い物に出かけた八雲を真紀が見かけて、その八雲の見た目を景子に話すと景子は〝仲間〟だと確信しいつか会えるかもと期待を膨らませる。
渡部は先輩の様にはなれないと落ち込むが、同僚は「あれは特殊技能だ」と慰めるのだった。
第7話~第9話
景子と夏美、それぞれのアンドロイドとの話。
夏美が八雲と同じく買い物中のギルと遭遇する。ギルの見た目から彼の持ち主は間違いなく同胞(ソウルメイト)だと夏美は確信する。八雲がギルに話しかけ、会話をしている2体のアンドロイドを見て夏美はその美しい絵面に歓喜する。
身だしなみをしている八雲に夏美が声をかけたところ、彼が返した言葉が自分が理想とする完璧な答えだったので夏美は尊死するのだった。
ぎっくり腰になってしまった夏美に代わり、八雲は買い物に行く。一方、ギルと一緒に買い物に出かけた景子は店内で八雲を見かけ、真紀が見たと言っていたアンロイドだと気づく。八雲はギルを見るとこちらに話しかけてきたので景子が〝ご主人様〟について尋ねると、八雲の言葉に景子は持ち主の癖(へき)を一瞬で理解して納得したのだった。
八雲と親しく話していた景子にギルが嫉妬をし、滅多にない事に喜んだ景子は八雲のおかげだと菓子折りを渡す。八雲から菓子折りを渡された夏美は事情がよく分からず驚く。
第10話~第11話
老夫婦とアンドロイドの話
ドリーム・パートナーズに老夫婦がやってきた。応対した渡部はカスタムの希望が書かれた紙を読み、あまり理解できないまま二人に質問をするが二人の答えは真逆で設定を統一できない。喧嘩を始めた夫婦を前に渡部が困っていると高橋が現れ二人のキャラクターへの解釈の不一致を瞬時に理解し、二人の望みが叶う提案をする。あっという間に納得した二人に数か月後アンドロイド(フィエロ・サングリア)が届く。
老夫婦がフィエロを作ろうと思ったのは、アンドロイドフォトコンテストで入賞を繰り返している景子のギルを見てファンになったからだった。同じように自分たちの理想のアンドロイドを作ってもらおうと、ギルを作ったドリーム・パートナーズに依頼したのだとフィエロに語り、フィエロはギルに会ってみたいと思うのだった。
第12話
ドリーム・パートナーズ高橋のアンドロイドの話
街中で偶然高橋に会った渡部。今からメンテナンスに出していた自分のアンドロイドを引き取りに行くという彼の話を聞いて、カリスマ販売員である高橋のアンドロイドが気になりこっそり店までついていく。そこへ高橋と高橋そっくりのアンドロイド(高橋B)が現れて、渡部は驚愕する。高橋のように強い嗜好を持たないと立派な販売員になれないと思った渡部は高橋に心意気を宣言して帰って行く。その後ろ姿を高橋と高橋Bは淡々と会話をしながら見送るのだった。
第13話
アンドロイドで創作をしている人々の話
アンドロイド創作の推し作家にファンメールを送ったゆみりに返事が届き、ゆみりは感激して自分も創作に励むと発奮するのだった。ちなみにその推し作家の正体は夏美だった。
第14話
新しい赴任先にやってきた一人のサラリーマン。アンドロイドを連れた人々が多いことに気づくが、自分はアンドロイドを〝喋る家電〟程度にしか思っておらず、欲しいと思った事はなかったと考える。
そんな彼の前にフィエロが通りかかる。昔の漫画のキャラに似ているなと思いつつ、ロボットアニメしか見ていなかったのでよく分からない。次にゆみりと恵美と一緒にいた燈火と水輝に出会い、夏美と八雲、景子とギルにも遭遇する。
ただのアンドロイドではない事に驚いていると、チラシを配る高橋と渡部に呼び止められ「お客様の『好き』や『夢』を叶える」という言葉を聞き、考えを改める。
そして彼はのちに自分の夢と理想が詰まったアンドロイドを作るのだった———
描き下ろし1
アンドロイドコンテストの話
これまでのキャラクター(人もアンドロイドも)が大集合。最後に登場したアンドロイドは……?
描き下ろし2
お墓参りに一人で出かけた景子の話。
感想&ネタバレ
とにかくキャラが最高。登場人物のセリフがみんな面白い。オタク用語満載。
読みながら「フフフ」と声に出して笑ってしまったの久しぶり。
景子が外見から想像できないほど中身がオタクで、理想のアンドロイドの設定が魔界の第二王子(黒い翼付き)という中二病ど真ん中な事に笑いが止まりません。名前も「ギルディア=ロッド=シン=ダークスター」としっかり名付けられていて、もう最後のダークスターで「あるある!」って紅茶噴きました。
気位の高いギルとのほほんとした景子のやり取りは微笑ましく、真紀じゃなくても様子を見に行きたい。
そう、この真紀の存在が素晴らしい。真紀のツッコミがこちらの読者側の気持ちそのもので、吹き出しだけじゃなくてコマ内の隅々まで見て欲しい。彼女のアンドロイドはカスタムというよりは量産型なのかなと思われるイケメンマッチョなので冷静な常識人なのかと思っていましたが、実は元アイドルのおっかけというある意味オタクでした。アンドロイドの撮影に情熱をささげているところ、大好きです。良かった、仲間だった。
そしてこの祖母にしてこの娘と孫ありというか、恵美とゆみりのキャラがもう激しすぎる(好き)。恵美はキャラを見ただけで瞬時に攻と受を判別する能力があり、自分で貴腐人とか名乗っちゃってるし 笑。しかも昔は同人活動に励んでいたと思われる言動がちらほら……というか隠しきれておらず、そのせいかゆみりは無事にオタクの血を引き継いで純粋培養されています。ゆみりは子供ながらあの設定を出してこれるのは将来有望です。
この二人にツッコむのがお父さん。妻と娘がオタクにありがちなテンション高めで萌えを語り合っているので会話に入れずに、ツッコミながら生温かい目で優しく(?)見守っています。お父さんの存在は必要です。
夏美は中々特殊な癖(へき)……というか好みを持っていて、どうしても譲れない線引きがありこだわりが強いオタクです。そんな彼女のアンドロイドは〝千年の時を生きるケモ耳妖狐〟。よくぞ生み出してくれた!と私も拍手したいです。この場合も夏美と高橋への渡部のツッコミが楽しい。オタクの暴走には冷静なツッコミ係が必要なのです。
その他にもアンドロイドが出てくるのですが、ドリーム・パートナーズの高橋がいないとこの世界は始まらない。指名件数TOP販売員の高橋の接客ももっとたくさん見たいです。
描き下ろしは全員集合。マダムたちの交流が楽しい。ここでの各人のセリフが面白過ぎてお腹痛い 笑。ぜひ読むべき。第14話に登場したサラリーマンのアンドロイドが登場し、「そう来たかー!」となるのは間違いなし!
この作品を読み終えると、自分ならどんなアンドロイドにするかな~と妄想すること必須。私はいまだにあれもいいなこれもいいなと迷っています。この時間がまた楽しい。ちなみに最有力候補は上川隆也さんの容姿で執事風、次点が顔面国宝平野紫耀くんの顔で後輩風ですかね……(夢が広がります)
読んでる間も読み終えても楽しいこの作品、ぜひ読んでください! そして自分のアンドロイドを脳内で作りましょう!
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