『迷路館の殺人』あらすじ・登場人物・トリック・感想【読者すら迷宮に閉じ込める名作】

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『迷路館の殺人』は綾辻行人先生による館シリーズの3作目です。

『迷路館の殺人』は、読者が館の一員になってしまう、叙述トリックの名作です。
ミステリーファンの間でも屈指の人気を誇る「館シリーズ」の3作目として、いまなお語り継がれる1冊です。

名作と謳われるのは、この作品がただの「叙述トリック」で終わらない、“二重三重に仕掛けられた”超本格派ミステリだからなんです!

この作品、実は単なる「館モノ」ではないんです!

これらがすべて、複雑に絡み合っているのが「迷路館の殺人」の恐ろしいところ。だから読了後に、「やば…やっぱりもう一回読まなきゃ!」となるのも当然なんです。

今回は【あらすじ】【登場人物】【トリック解説】【感想】を、ネタバレ配慮でご紹介します。
まだ読んでいない方にも、読み終えた方にも楽しめる内容になっています。

目次

あらすじ

迷路の写真
image by Tobias Rademacher from Unsplash

あらすじ

奇怪な迷路の館に集合した四人の作家が、館を舞台にした推理小説の競作を始めたとたん、惨劇が現実に起きた!
完全な密室と化した地下の館で発生する連続殺人の不可解さと恐怖。逆転また逆転のスリルを味わった末に読者が到達する驚愕の結末は? 気鋭が異色の構成で挑む野心的な長編本格ミステリー。

講談社文庫 裏表紙より

推理作家・宮垣葉太郎の還暦祝いに集められた作家たち。館の主人である宮垣は、【作家たちに5日間で推理小説を書かせる】という奇妙な提案をします。
しかし、執筆された小説の筋書き通りに、作家たちが1人、また1人と命を落としていきます。迷宮のような館に閉じ込められた作家たちは、恐怖と疑心暗鬼の中で、生き残りをかけて推理を始めます。

迷宮と化した館の中、探偵役・島田潔は事件の真相に迫っていきます。

登場人物

推理作家たち
宮垣 葉太郎(60)「迷路館」の主人
清村淳一(30)元劇団員の推理作家、舟丘の元夫
舟丘まどか(30)清村の元妻、女性作家
須崎昌輔(41)実力派の作家
林宏也(27)若手作家、熱意と純粋さを併せ持つ
その他の関係者
鮫嶋智生(38)評論家、元数学教師
宇多山英幸(40)・桂子(33)宮垣葉太郎の編集担当とその妻
井野満男(36)宮垣の秘書
角松冨美(63)家政婦
島田潔(37)探偵役。シリーズおなじみの冷静な論理派

彼らは、ただの登場人物ではなく、事件と密接に関わる“迷路のピース”でもあるのです。

館にいるのはこれで全員! 犯人はこの中にいます!

迷路館の仕掛けとトリック|読者を欺く構造

地下への階段の写真
image by Ginevra Austine from Unsplash

作中作(メタフィクション)の面白さ

作家たちが書いた小説が、そのまま現実で実行される構図。
推理作家同士が筋書き通りに次々と命を落としていくという、物語そのものが「作品内の作品」として進行します。

見立て殺人の演出

被害者や犯行手口が、まるで古典的なミステリへのオマージュのよう。
読者は一見、見立て殺人にばかり注目しますが、実はそこが最大の罠でもあります。

読者を巻き込む叙述トリック

本作の真価はラスト直前。
「読者がこれまで見てきた光景」がひっくり返る衝撃。
それは、まさに“読者すらも迷路館の住人”だったと気づかされる仕掛けなんです。

ネタバレ感想|読者もまた「迷路館」の住人だった

たくさんのドアの写真
Image by Arek Socha from Pixabay

※ここからは作品の根幹に関わるネタバレを一部含みます。未読の方はご注意を。

1. 筆者の感想:「やられた…!」しか言えない

最初は純粋に、
「作中作の筋書き通りに殺されていく」
という展開にワクワクしていました。

次は誰が?どんなふうに?と、作家たちと同じ目線で推理を進めていたんです。
ですが、最後のあの一撃——

「あれ、じゃあ“あの語り”って誰だったの…?」

と気づいた瞬間、世界が反転しました。

読み返さずにはいられない、というより、
読み返すことで初めて全貌が見える”ように仕掛けられている。
その構造に、ただただ感嘆しました。

読者のリアルな声も紹介

同じように驚かされた読者の感想を見てみましょう。

『迷路館の殺人』読了。
ラストで“読者まで巻き込まれてた”ことに気づいて戦慄。
これが叙述トリックの恐ろしさか…。

途中までは普通の“館ミステリ”って思ってた。
でも真相が明かされた瞬間、もう一度読みたくなる!
構造と演出が天才的…。

島田潔って、読者目線の代弁者だったんだなって、あとから気づく。
あの静かな終わり方、すごく余韻が残った。
「迷路館」という舞台が、読後にもじわじわ効いてくる。

叙述トリック+静かな余韻=“また読みたくなる”一冊

読了後、無性に最初のページを開きたくなります。
そして2周目では、あらゆる描写が違って見えるのです。

これはもう、叙述トリックというよりも、
読者の脳に仕掛けられた“心理装置”だと感じました。

ラストの静けさ、登場人物たちの余白、
そして“館”そのものが仕掛けだったという構成——

「あぁ、自分もまた“登場人物のひとり”だったのかもしれない」

そんな不思議な読後感が、静かに胸に残りました。

まとめ

ギリシャ神話の像の写真
Image by Vlad Mamai from Pixabay

『迷路館の殺人』は、館シリーズの中でも特に読者参加型の要素が強い作品です。
読み進める中で、何度もミスリードされ、読後にはその構成美に唸らされること間違いなし。

最後に一つ! 私が一番好きな場面を語りたい!

終盤に出てくるとあるブロンズ像の手の上に玉を乗せると……秘密の入り口が、という場面。こういうのって大概何かを乗せたらその重みで像が動いてスイッチが入って扉が開く、というパターンだと思うのですが、そうはいかないのがこの館シリーズ。
秘密の入り口を見つけるまで本当にワクワクしました。迷路館ならでは、の設定でまたもや唸ってしまったのです……。

ぜひ迷路館の“迷路”に挑み、叙述トリックの罠にかかってみてください。

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