ミステリー界の金字塔的存在である綾辻行人先生の『十角館の殺人』がhuluでドラマ化されると知って、映像化不可能と言われたこの作品がドラマで見られるなんて!と胸躍らせました。
不安より期待が大きかったのは、5年前の漫画化が成功だったからです(と思っています)。そして監督が内片輝さんで『綾辻行人・有栖川有栖からの挑戦状 安楽椅子探偵』(朝日放送)シリーズを撮った監督さんだったからです。
綾辻先生としっかりと打ち合わせができる方なのだろうし、何と言っても安楽椅子探偵が先生にとって不満がある出来だったら十角館の殺人の映像化など許されるわけがないのですから。という事は、綾辻先生が絶大なる信頼を置いてらっしゃる方が監督さんなら間違いないでしょう!という謎の自信がありました。
放映開始は3月22日。唯一残念だったのは全5話だという事。5話で終わっちゃうの!? もっと見たい!っていう単なる我儘でしたが。故に一気に見るのが惜しくて、1日1話という縛りを作って5日間かけて見ました。感想は
実写化ありがとう……!
こんなに満足した実写化が今まであっただろうか、というくらい大満足でした。本当に面白かった。映像で見られて幸せでした。
このブログは小説と漫画についてのみ書くつもりでしたが、ドラマのカテゴリーも作ってしまいました。
そんな私の感想を残したいと思います。ぜひ原作を読んで、huluで実写を見てほしい!(逆も然り)
感想とネタバレ
はっきりとは書きませんが、少々ネタバレになるところもありますのでご注意ください。
キャスト(江南と島田)について
3月22日配信に向けて、2/7にキャストが発表されました。主役の江南くんを始め大人組、と言ったところです。楽しみにしていた島田潔役が青木崇高だと知っての最初の感想は
青木崇高…? え、ちょっとガタイ良すぎない???
でした。———というのも、原作でこの島田 潔は
『痩せて背の高い、やたらと細長い男である』
〝痩せぎす〟〝細長く〟〝細身〟
『痩せた頬がいっそうこけて見える』
本編より
と紹介されていて、江南がカマキリを連想しているのです。だから不健康そうなひょろひょろとした男性をイメージしていたのです。
だから青木崇高さんだと健康的すぎるのでは…?とキャラと合わないなぁと思ったわけです。
ところがですね、本編を見始めると原作通りの〝浅黒い顔〟の彼が淀みなくペラペラと話し、人懐っこいところがあって、「子供か!」ってツッコミたくなるようなちょっとお茶目なところもあり、誰の懐にもするりと入り込んでしまいそうな気さくな雰囲気を持ちながらも、飄々として掴みどころのない感じが見事に島田潔だったんですよ。青木さん、上手いなぁ……。
江南役の奥 智哉くんは存じ上げなかったのですが、可愛らしい感じの子にしたんだなぁと思いました。本土組の守須がクールな感じなので、対比させたんですかね。ただ推理に没頭していく江南の純粋さがよく表れていました。
江南と島田のバディ感も良かったですね!
ミステリ研究会の面々
角島に向かうミステリ研究会の面々、船の上で彼らの人となりが何となく分かります。エラリイ、鼻につくわ~ 笑。ここはカーに完全に同意。ポウが眼鏡のすらっとしたインテリになってたのはちょっと意外だったかも。ルルウは可愛い後輩って感じが良く出てて、アガサの自信に満ち溢れた強気な女子って感じも良かったし、オルツィの大人しくておどおどした感じも良かった。島で出迎えたヴァンは具合悪そうでマスクもしてるので顔がよく分からないけど、落ち着いていて特にクセはなさそう。
館に入ったあとのアガサの女王様的な振る舞いや、エラリイの理屈っぽい皮肉屋なところとか、カーが態度悪くて攻撃的とか、誰と誰が反発しあっていて、誰と誰が気安いのか序盤でかなりわかるようになっています。
時代背景
原作の時代背景は1986年の〝昭和〟なのですが、何と実写でも忠実に再現しています。コミックは現代に合わせていたのでスマホとか出てきてましたけど(スマホなんか出てきて大丈夫か…?と思いましたが角島では圏外で使えないという事になってました)、非常に原作に忠実です。(大事な事なので二回言います)
江南のアパートなんか雰囲気最高でしたね。お節介な大家さんとかあの時代に居てそうですもんね。部屋の中のごちゃごちゃした感じも味があって、小道具さんは楽しくセッティングしたのでは?と思ってしまいました。電話もプッシュタイプですよ。本棚にはミステリー小説、事件をスクラップした自作のファイルなどが並んでいて、探偵気質があるのだなと想像させてくれます。ただこの時代は大家さん曰く探偵業=堅気の仕事じゃないという時代なので、一人で推理して楽しむといった感じでしょうか。それにしても工学部の江南の部屋になぜ人体模型が??
炊事は女がする、というこれまた昭和では当たり前だった光景が繰り広げられています。食事はアガサとオルツィが作り(文句は言ってますけど)、コーヒー淹れて、と皆が普通にアガサにリクエストして彼女も自然に淹れてますが今なら自分で淹れなさいよ!って言われるんですかね。しかも、コーヒーに毒が入っていたことで犯人かと疑われるアガサですが、それでも監視を付けてまで食事はアガサに作ってもらう男たちがよく分からないですよね。
あとみんな煙草をスパスパ吸ってますね。この時代って大学生でもこんなに吸ってたんですかね。最近はドラマでも喫煙シーンがかなり少ないので、やたらと吸ってるなぁというイメージ。
各話のポイント
第一話
- 十角館、いいですね。建物だけでなく、ホールも天窓もテーブルもお皿なども十角形。コーヒーカップが十角形なことに触れなかったけど、いいのかな……。
- アガサの聖子ちゃんカットとフリフリブラウスが可愛い。長濱ねる可愛い。
- 島田のはしゃぎっぷりが子供みたい。江南と普通に友達になってる。自由人という感じが出てますね~。
- 紅次郎が演技派の角ちゃんだ! 仲村トオルの兄……? むしろ弟では。
- 守須恭一。インテリ眼鏡。江南と正反対のタイプっぽいけど仲良かったのがちょっと不思議。
- 江南……〝父〟の他にもっと言いようがあったでしょ 笑
- 庭師の奥さん、草刈民代さま! キッチンにあるホーローのお鍋とかが昭和を感じます。
- オルツィの部屋のドアに〝第一の被害者〟というプレートが貼ってあるのを見たアガサが悲鳴を上げずに「誰か……早く来て!」と言ったのがリアルっぽくて良かったです。
第二話
- オルツィ、目を開けたままピクリとも動かなかったなー。すごい。
- エラリイは実際の殺人事件に遭遇した嬉しさが隠しきれてないね。 ザ・不謹慎。
- 凄惨な事件現場との対比の島田の寝顔よ 笑
- 『オルツィを殺したのはだあれ』アガサの言い回しが原作と一緒!(嬉) 〝だあれ〟がポイントなのよね。
- 江南に責任押し付けたー! 島田ずるい 笑
- 最後のアガサのキャーはこれらが現実で逃れることはできないのだという絶望からの悲鳴で良かった。
第三話
- 「事実を確認しよう」と落ち着いてその場を仕切るエラリイ。こういう所は頼りがいがある。
- ルルウの感覚が一番普通っぽい。この中に殺人犯がいるかも、と思ったら出されるものに口を付けるのは怖いと思う。全く気にせず口に入れるエラリイは初めから外部犯だと思っているからだったのか、仲間を信じていたのか。
- 島田、誰とでも仲良くなるなぁ。コミュ力お化け。
- 『自分のせいで何かが変わった、なんて思うのは傲慢だよ』——島田もたまには良いこと言います 笑
- みんなが参ってるのに飄々としているエラリイ強心臓だね。
- ルルウを探すエラリイは今まで一番必死だった。ルルウを可愛がってたんだな……。
第四話
- エラリイはルルウが死んだ時だけホント悲しそうだなー。アガサの事はまた茶化してるし。(それを見るポウの視線よ)
- 三人の話し合い、空気の重さが伝わってきてこっちも心苦しい。
- 紅さん……! 角ちゃんの独白の演技上手かった。藤棚の下をゆっくりと指さすところ、すごく良かった。
- 車の中で明日角島に行こうと話している江南と島田から視線を遠くにやると、小さく火の手が上がっているのがもう間に合わない、という悲しさを感じる。
- 来た来た来たー! 例の衝撃の一行が! スローモーションになるのが憎いね!
- ここで初めてクレジットですよ。確かにここまではキャスト名出せないわ。
第5話
- 原作未読の人は、この5話の冒頭からずっと「え? どういうこと?」「どうやってやった??」って戸惑ってるなろうなぁとニヤニヤしちゃう。
- 島田兄、弟とタイプは違うけど親しみやすさは同じっぽい。
- 外部犯とは考えられないという刑事の話を聞いてつい笑みが漏れちゃってるぞ! ダメだぞ!
- 大家さん何だかんだ言ってもよく見てくれてるんだよね……。
- 犯人の独白。あの時どうだったかな、と思い返しながら見るのが面白い。
- めっちゃ紅茶飲んでたもんな。
- 「哀れだな、エラリイ」になってた? 「愚かなエラリイ」はあったかな?
- 実写オリジナル発動。あれ? 江南が出てきたぞ? 何か明後日の方向の推理披露してる~。
- でもまさか自分の知らない千織の事を江南に教えられるとは、動揺しただろうな。そして審判は下りた。
原作既読だからこその楽しみ
※以下は原作未読、実写未視聴の方は読まれないことをお勧めします。
暗にぼかしているとはいえネタバレですし、むしろ原作既読の人が読んだ方が頷けると思います。
犯人を知っていると、さてどういう演出になっているのかな、と思う訳ですよ。だから最初に彼が出て来た時は「あ~~そう来たか~」ってニヤニヤしちゃいましたね。そういう感じで行くのね、という。
だからついつい彼を目で追っちゃって、どう誤魔化すのかなという事ばかり気になってしまいました。
彼は常に、端っこに居たり、後ろ姿だったり、遠目だったりとあらゆる撮り方をされていて、上手いなぁと感心してしまいました。
次に出て来た時はわぁ、と声が出てしまったくらいです。これ、犯人を知らない人は本当に気づかなかったんじゃないかな? どうだったのか聞きたい。
ミステリ研究会の面々のキャストが発表された時に、ちょっと拍子抜けしたんですよね。私は若手俳優さんをそんなに知らないとはいえ、有名どころがほとんどいないなと。こんな有名な超大作の実写化なのにあれれ?と。長濱ねるちゃんは知ってましたけど、名前を聞いただけで顔や声がすぐに思い浮かぶ人がもっといてもいいんじゃないかと。
だけど、それだとこの方式が上手くいかないんですよね。声で気づかれちゃ困るもの。役者さんも上手かったし、脚本、演出も素晴らしかったのではないでしょうか。
あんまり彼ばっかり見てたので、2周目からは視野を広げました 笑 小物を見るのが楽しい~。
終わりに
大満足でした。もう5周くらいしています。再び『十角館の殺人』の世界に触れることができて嬉しくて、実写化ありがとうという気持ちでいっぱいです。
ただ、人間って欲が出ますよね……。
これで館シリーズの実写化の道筋ができたと言ってよいのですよね??
ということで、青木崇高さんという素晴らしい島田潔が生まれた今、次は『水車館の殺人』ですね! 監督、スタッフの皆様、よろしくお願いします。今から水車館の殺人を読み返して準備しておきます!
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